代官山 蔦屋書店 オフィシャルブログ
コンシェルジュ自ら仕入れた商品、企画したイベントなどを紹介します。

伝説のヴィンテージファッション誌、『Flair』マガジンをご存知でしょうか?

2014年7月7日19:11
伝説の『Flair』マガジンをご存知でしょうか。


 『Flair』マガジンは、今から半世紀以上前の1950年、そのわずか1年間だけ月刊で刊行された知る人ぞ知るアメリカのファッション誌です。2003年にイタリアのモンダドーリ(Mondadori)社が、53年ぶりに、21世紀版の『Flair』誌を刊行しているので、若い方でも名前は聞かれた方もいらっしゃるかも知れません。現在、当店では、ヴィンテージ『Flair』マガジン、全号扱いあります。(Set販売は全号揃い。各号バラ売りの場合、2号売れています)




ちなみに「Flair」という意味は、スマートさ、センスのよさ、さらにはものを嗅ぎつける勘、鋭い嗅覚、才能という意味合いもあります。 
ファッション・マガジンのヒストリー的にも、アレクセイ・ブロドヴィッチ氏がアートディレクターとして、またダイアナ・ブリーランド氏がファッション・エディターとして活躍していた『Harper's Bazaar』やアレキサンダー・リバーマン氏がアートディレクターだった『Vogue』とは異なり、小気味良い手づくり感を残しつつもハイセンスであるという困難な方法が選びとられていました。


編集発行人フルール・コウルズ氏(Fleur Cowles)

『Flair』マガジンのそうした編集方針はどこからきたのでしょう。編集発行人フルール・コウルズ氏(Fleur Cowles)は、自身画家であり、作家であり、イラストレーターでもあったことが一番にあげられます(後に、アクセサリーやタペストリー、陶磁器のデザインも手掛けています)。


アーティスト、イラストレーターとしてのフルール・コウルズ氏の作品集




そのため創刊号では、ジャン・コクトー氏に画家ルシアン・フロイド氏、サルバドール ・ダリ氏、ソウル・スタインバーグ氏、作家のテネシー・ウィリアムズ氏にバーナード・ショー氏、ヴォーボワール氏、マーガレット・ミード氏、ジプシー・ローズ・リー氏…。 
写真家からはウォーカー・エヴァンス氏。フルール・コウルズ氏好みの、米国内のみならずヨーロッパの錚々たる人物に寄稿を依頼しています。



『Flair』マガジンを創刊した時、彼女は42歳になっていました。まだ若い頃は、『LOOK』誌のアソシエイト・エディターとして(後に『LOOK』誌の編集長が夫になる)、その後、離婚後、ヨーロッパに渡り、雑誌のエディトリアル・コンサルタントの仕事に就いています。
 そうした職歴も、『Flair』マガジンの編集やエディトリアルデザインを生み出すベースになっています。



結果、『Flair』マガジンは、『Vogue』、『Town & Country』、『Holiday』といった当時の名だたる雑誌が入り交じった”ブイヤベース”の様な雑誌と言れることもありました。 

 そのデザインセンスとエディトリアルは、『Flair』マガジンを20世紀のファッション誌で最も影響を与えた雑誌の一つとまでいわせる程のハイクオリティさでした。
  "the first magazine that became an art form”、「アートのかたちになった最初の雑誌」、また目映いばかりのセンスを一つのかたちに仕立てた当時の”Visionaire”ともいわれています



表紙に切れ込みのあるデザイン、インサートされたポストカード、ブックレット、多様な折り込みページ、アコーディオン型のリーフレット等々、『Flair』マガジンは今につながるファッション誌に多彩なアイデアをもたらすことになるのです。
またその贅沢なつくりは、フルール・コウルズ氏の感性や編集方針だけでなく、 ヨーロッパのアートディレクター、フェデリコ・パラヴィチーニ氏のセンスにもよります。 

 結果的に制作面の高コストは、『Flair』の命を1年に縮めてしまいましたが…。






 こうした読者を楽しませるアイデアから、アンディ・ウォホール氏のPOP-UP BOOK『Index Book』を思い浮かべはしないでしょうか。


アンディ・ウォホール氏のPOP-UP BOOK『Index Book』

A.ウォホール氏がNew York にでて最初に手にした仕事は、女性誌の広告のイラストレーションでした。ウォーホル氏がピッツバーグからNew Yorkに出てきた翌年に『Flair』マガジンが創刊されています。ウォーホル氏は『Flair』マガジンを手にし、興奮して寝つけない夜をすごしたにちがいありません。



2005年にBox入りで刊行されたもの。『Flair』誌の素晴らしさが伝わってきます。

2003年にイタリアのモンダドーリ(Mondadori)社が、なんと53年ぶりに、21世紀版の『Flair』誌を刊行することになります。ニュー『Flair』マガジンの目指すところは、「ファッションとアートとカルチャーのため、世界のファッションのクリエイティブに注視し、スタイルを愛する女性のためのニューマガジン」と位置づけています。



21世紀版の『Flair』誌(現在、当店での復刻版『Flair』の扱いはありません)

21世紀版の『Flair』誌創刊号の心がざわつくような素敵な表紙は、写真家ユルゲン・テラー氏によるもの。
雑誌のスピリットが宿るロゴは、1950年当時のロゴ(号によって書体がちがう時もありますが)をほぼ継承していることからも、オリジナルの『Flair』誌の正統的な継承誌であることがわかります。
新たな装いの新『Flair』誌を見た創刊発行人フルール・コウルズ氏は2009年、101歳でこの世を去っています。 

亡くなる前の彼女の部屋、まさに『Flair』マガジンが空間化したした様な、香りのある空間ですね。ぜひ一度、『Flair』マガジンを直にご自身の目と感性で、体感して頂ければとおもいます。


アートコンシェルジュ加藤正樹

-----------------------------------------

eventmail_bnr.jpg