at 2号館アートフロア、写真集通路ガラスケース
ユルゲン・テラーの写真は、アナーキーにしてスキャンダラス、ユーモアとウィットに自虐的陽気さをコンバインしたもので、カジュアルな写真のなかに潜むステレオタイプの破壊は徹底しています。このオープンスタイルさは、荒木経惟のスタイルと響くものがあり、パーソナルな世界のヴィジュアルダイアリーのエッセンスとつながり、実際に展覧会と写真集『Araki Teller, Teller Araki』(by Eyescencia, 2014)となって発表されています。
写真集『Araki Teller, Teller Araki』(2014)
アートワールドとコマーシャルのフィールドの境界やカテゴリーをふっ飛ばすユルゲン・テラーにとって、被写体となった人々を”プロヴォーク(挑発)”することが仕事の入り口となっています。ヴィヴィアン・ウェストウッドやシャーロット・ランプリングの写真にみられるように、刺激された被写体は、一気に撮影に巻き込まれていきます。コラボレーターはユルゲン・テラーの写真世界の”共犯共謀者”になる勇気のある者しかなれません。そのプロセスは、ドキュメンタリーとメイキングフォトの間にあって、どちらをも犯すものといっていいでしょう。
『Do you know what I mean』より
この撮影スタイルは、従来の写真家とモデルとの予定調和的関係からもっとも遠いところにあります。モデルとの強烈なダイアローグを求めることは、モデルのパーソナリティとのオープンな絡みが写し出されることになります。最初はパーソナルなリアクションへの関心からだったようです。そうしたモデルたちのパーソナルリアクションをまとめたのが、初期の名作写真集『Go-Sees』です。以下、何冊がご紹介致します。どれもユルゲン・テラー・ワールド満載です。
『Go-Sees』より
『Go-Sees』
1990年代のユルゲン・テラーの写真集のなかでもアイコニックな写真集。撮影ロケーションは、ウェストロンドンにあるユルゲン・テラーのオフィス。モデルエージェンシーに選抜したモデルではなく連絡があったすべてのモデル志望者を訪問させ、オフィス入り口でキャスティングシュート。一人で、グループで、両親と共に、1年間で数百人が来訪。モデル業、ファッション産業の一面が垣間見える。コンセプチャルなシチュエーションポートレイト写真集となった。SOLD!(入手困難になってきております。価格上昇中。今後再入荷の方向)
『Election Day』2003より
『Election Day』
バラク・オバマ氏が大統領当選を決めた日(2009年)が、本書のタイトルになっている。プラトンの『国家』をみるパメラ・アンダーソンやヴィヴィアン夫妻、ロックバンドのThe Queens of the Stone Ageのスナップは、同年のヴィヴィアン・ウェストウッドSpring/Summerキャンペーンイメージ。あのウィリアム・エグルストンにも写真集『Election Eve』がある。1976年のジミー・カーターの大統領選前夜のテネシー州の静かな日常を撮ったもの。本書はエグルストンへのオマージュだろう。
『ヴィヴィアン・ウェストウッドSpring/Summerキャンペーンイメージ 2003』より
『Louis XV』より
『Louis XV』 2004
世界のファッション
シーンをマッシブアタックした本作品集は、ユルゲン・テラー40歳の時のパーソナルプロジェクト。65歳になったユルゲンのミューズ(女神)女優シャー
ロット・ランプリングと共に「ルイ15世」をロールプレイ。ウィーンでの大回顧展に併せて制作された。セルフヌード・ポートレイトは、ユーモアに満ちた演
劇的ロールプレイと自虐的個人史、セルフイメージの粉砕が渾然一体になったもの。
被写体となった人々を”プロヴォーク(挑発)”し、予定調和な写真をぶち壊しつづけるユルゲン・テラー。刺激された被写体は一気に撮影に巻き込まれていく。ドキュメンタリーとメイキングフォトとの、ファッション写真とアート写真との境界線やカテゴリーさえはここにはまったくみえない。コラボレーターは”共犯共謀者”になる勇気のある者しかなれない。
SOLD OUT! (今後再入荷の方向)
『Louis XV』 2004 &『Do you know what I mean』 より
ご存知ジェフ・ク―ンズとチチョリ―ナをパロッたユルゲン・テラ―とシャーロット・ランプリング
各1冊づつしかないタイトルもあります。どうぞこの機会にユルゲン・テラー・ワールドをチェックしてみて下さい。
アート・コンシェルジュ 加藤正樹
-------------------------------------------------------