アップルパイのようなアメリカのパイ
ミンスパイのようなイギリスのパイ
ミルフイユのようなフランスのパイ
どれも大事なことはただ一つ
冷たいバターを使うこと
▲(左より)『オープンパイ』『パイの歴史物語』『本当はラクなパイ作り』
『一人で学べる ザックサクッザクッ! 押しよせるおいしさのパイ』
『一人で学べる ザックサクッザクッ! 押しよせるおいしさのパイ』
●生地は少しずつの時間で作る
バター、粉、水だけで、パイ生地はできます。
◎『忙しい人こそうまくいく たどり着いたレシピは「作りおき」と「分割仕込み」
本当はラクなパイ作り』
(空閑晴美(くが・はるみ)著、誠文堂新光社・刊、1,300円(税抜))
材料はいったん冷蔵し、その後フードプロセッサーで攪拌します。
▲この本では、薄力粉(バイオレット)、
無塩バター(食塩不使用バター)、水を使っています。
この生地を折りたたむこと3~4回で、冷凍で30日もつパイ生地の出来上がり。
▲上はパイ生地。生地を保存するなら冷凍で!冷蔵できるのは2日まで。
▲りんごの甘煮とミルクチョコのかけらをハンドパイに詰めて焼きました。
バニラアイスを添えるとさらにおいしい。
写真左上のアップルパイにはりんごの甘煮をどっさり。
著者は、イギリスでフランス料理を学び、パイ生地も両国の良さを取り入れて、家庭で日常的に作れるレシピを提案しています。
まとまった時間がなくても、一日一作業を貯金のように積み重ね、食べる時に仕上げれば、パイ作りはラクになります。
●パイは昔はお弁当箱だった
パイは昔はイギリスで、「耐熱容器と同じ役割を果たし」、「持ち運びできる収納容器」でした。●パイは昔はお弁当箱だった
つまり、かまど(オーブン)に入れて焼くための器であり、お弁当箱でもあったのです。パイの歴史が一望できる一冊をご紹介します。
◎『パイの歴史物語』
(ジャネット・クラークソン・著、竹田円・訳、原書房・刊、2,000円(税抜))
「ほとんどのパイに応用が利く基本の生地」として、イギリス式パイ生地、ショートクラストペストリー(英;shortcrust pastry)のレシピが本著の巻末に紹介されています。
▲「パスティー(pasty)」と呼ばれる、携帯型お弁当パイ。
上の写真は、ハンドパイ形の「パスティー」を真横にスライスした断面。
牛肉と野菜のメインディッシュに、デザートの果物を詰め合わせました。
2種の味が混ざらないよう、間にパイ生地でしきりを入れています。
ショートクラストペストリーのレシピは、薄力粉対バターの割合が2:1で、冷たい水を少し加えてつなぎにします。
イギリスの小麦粉は主に蛋白質10%位なので、薄力粉と強力粉を半々で配合してみました。
▲自家製ミンスミート(ドライフルーツをスパイスとお酒に漬け込んだもの)を、
ショートクラストペストリーに詰めてミンスパイを作りました。
中世の「イギリスでは、バターは貧しい人の食べものとされており、富裕層はラードを好んだ。」という流れから、イギリスの名物料理が生まれた、という話も興味深いものです。
●フランスのパイはパイらしいパイ
パイ作りの楽しさを丁寧に教えてくれる有難い一冊です。
こちらはフランス式のパイ生地のレシピです。
◎『一人で学べるザックサクッザクッ!押しよせるおいしさのパイ』
(弓田 亨、椎名 眞知子・著、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ企画・発行、2,700円(税抜))
▲家庭用電子オーブンレンジで焼きました。
小麦粉は「スーパーなどで売られている粉で十分」という弓田シェフに従い、
スーパーの強力粉と薄力粉をレシピの配合で使いました。
スーパーの強力粉と薄力粉をレシピの配合で使いました。
弓田シェフのレシピのパイ生地は、とても軽やかでパイだけでおいしい。
フランス菓子の名店、「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」のレシピは、「精密で科学的な考え方によって」「考え抜かれたパイの作り方」を、家庭でもできるように教えてくれる貴重なものです。
●冷凍パイシートで10分パイ
パイ生地は冷凍ものに任せて、おいしいパイを食べましょう、という本もあります。
◎『冷凍パイシートさえあれば! オープンパイ』
(新田亜素美・著、大和(だいわ)書房・刊、1,200円(税抜))
「この本では、パイシートは伸ばさずそのままで使用しています」という言葉が嬉しい!
フランス・アルザス地方の「タルトフランべ」(イースト生地)を、著者が「オープンパイ」(冷凍パイシート使用)と名づけました。
▲サボっても美味しく食べようと、さやごと水で洗ってトースターで10分焼いた空豆と、
盆ざるで数日干したエノキと、ピザ用チーズとマッシュルームをのせて焼きました。
干しエノキはチーズを減らし、旨味と栄養を高めます。
盆ざるで数日干したエノキと、ピザ用チーズとマッシュルームをのせて焼きました。
干しエノキはチーズを減らし、旨味と栄養を高めます。
この本には、「お手軽さにこだわり」見た目も味もおしゃれなレシピが続々並びます。
小麦粉、バター、塩だけの冷凍パイシートを使うと、自作パイ生地と変わらない味になります。
●熱湯パイ生地
パイ生地の材料はすべて冷やせ、の原則を、ひっくり返してくれる楽しいレシピもあります。
◎『アメリカ郷土菓子』
(原 亜樹子・著、PARCO出版・刊、1,600円(税抜))
「もっとポピュラーでもよいのに」と著者が選んだパイ生地の一つは、「熱湯パイ生地(hot water pie crust)」。これなら気温を気にせず作れます。
▲熱湯パイ生地の断面。
薄いながらもちゃんと“層”になります。
▲パイは「完全焼き」にして、グレープフルーツ2種(ルビーとホワイト)を並べ、
ヨーグルトと相性のよい蜂蜜(アカシア)を合せてみました。
この本では、「薄力粉と強力粉を半々」か「中力粉、または準強力粉」を使ってパイを作っています。
著者は、熱湯パイ生地は「チキンなどお肉のパイと相性がいい」、「バターを使えば」「甘いフィリングとも好相性」と記しています。
前述の『パイの歴史物語』にも「お湯で作るパイ生地」のレシピがあり、「こってりしたミートパイやパスティーに向いている」としています。
ラクするパイ、歴史のパイ、お店みたいなパイ、作らないパイ、意外なパイ…
読んでも作っても楽しいパイばかり。
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【紹介書籍】
1.『本当はラクなパイ作り 忙しい人こそうまくいく たどり着いたレシピは「作りおき」と「分割仕込み」』
1,300円(税別)
・オンラインストアはこちら
2.『パイの歴史物語』
(ジャネット・クラークソン・著、竹田円・訳、原書房・刊)
2,000円(税別)
・オンラインストアはこちら
3.『一人で学べるザックサクッザクッ!押しよせるおいしさのパイ』
(弓田 亨、椎名 眞知子・著、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ企画・発行)
2,700円(税抜)
・オンラインストアはこちら
4.『冷凍パイシートさえあれば! オープンパイ』
(新田亜素美・著、大和(だいわ)書房・刊)
1,200円(税別)
・オンラインストアはこちら
5.『アメリカ郷土菓子』
(原 亜樹子・著、PARCO出版・刊)
1,600円(税別)
・オンラインストアはこちら
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パイを自分で作ったら、お皿の上が華やぎます。
何より、焼きたてのパイはあったかい。
季節に合わせていろいろなパイ生地でパイを楽しみましょう。
料理コンシェルジュ
澤峰子
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