~代官山 蔦屋書店文学コンシェルジュが、とっておきの一冊をご紹介します~
「元祖カリスマ書店員」として知られ、雑誌やTVなどさまざまなメディアで本をおススメする、代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ・間室道子。
本連載では、当店きっての人気コンシェルジュである彼女の、頭の中にある"本棚"を覗きます。
本人のコメントと共にお楽しみください。
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『カササギ殺人事件』上・下
アンソニー・ホロヴィッツ/創元推理文庫
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アンソニー・ホロヴィッツ/創元推理文庫
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「ネタばれ」「好きな作家への理不尽な攻撃」など怒りの要素はさまざまだけど、「これをされたら私も相手を殺すかも」と生まれて初めて思えたのが本書。
今まで何千と読んできた推理ものやサスペンスの「殺す理由」は、反発あるいは同情こそすれ「同調」はしませんでした。でもこの本はやばい!
物語は8月の雨の夜、ロンドンにあるアパートのベッドの上で、ワインとお気に入りのスナックを片手に、自分は「カササギ殺人事件」のプリントアウトを読み始めた、と女性編集者が回想するシーンから始まります。
彼女はそのあと、「この本はわたしの人生を変えた」ともらし、もはや自分はあのアパートに住んではいないし、編集の仕事からも離れ、友人もたくさん失った、と言葉を重ねたあと、いきなり「カササギ殺人事件」の著者、アラン・コンウェイをボロクソにこき下ろします。
このあとページは「カササギ殺人事件」へと突入。
つまり本書は物語の中に物語がある、という「入れ子小説」なのです。
上巻はこれ以降、ドイツ人探偵・アテュカス・ピュントが活躍する「入れ子」の部分で占められますが、下巻のトップは最初に出てきた女性編集者が、出版社の社長に困惑の電話をかけるシーンから始まります。
入れ子小説と、入れ子の外にいる女性編集者にふりかかった事件の奇妙な一致。
ふたつの物語の犯人は誰?
『カササギ殺人事件』の著者・アンソニー・ホロヴィッツはテレビドラマの脚本家としても有名な人で、「とにかく人をクギヅケにして、チャンネルを変えさせない」が、小説でもいかんなく発揮されています。
「物語の中に物語がある?そんなの、めんどくさいんじゃない?読みにくいんじゃない?」という心配は、だからご無用!ひとくせもふたくせもある登場人物たち、あざやかな話運びが読み手を放さず、いつのまにかエンドマークになっていること必至です。
そして、ミステリ狂なら全員、「私だってそんな奴は生かしちゃおかないぞ!」と言いたくなるミステリ史上最悪の「いや~な行為」とは?
女性編集者がつぶやく、最後の一言にしびれます!
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