はじまりから写真の外側から技を繰り出し、2011年には金沢21世紀美術館や猪熊弦一郎現代美術館などで展覧会が催されるなど、写真サイドと現代美術サイドとの中間、「境界」にいつづけるホンマタカシ氏。その独自のポジションが、はからずも「写真」が本質的に孕む”虚々実々”をクールにとらえ、写真集からマガジン、Zineと多様なペイパーメディアに表現しつづけています。
「ホンマタカシ ヴィンテージ・ブックス・フェア」では、第一作品集『Babyland』から、アイスランドの郊外を撮った『Hyper Ballad』、そして日本の写真史のエポックメイキングになった『Tokyo Suburbia』。マニアックな『Tokyo Willie』、プリント付きの限定版『Tokyo and My Daugter』、New YorkのApertureから出版され海外でも高評価を得た『Tokyo』、金沢21世紀美術館でも展示された『Mountain “Seeing Itself”』や『Trails』『M』まで、すべてOut of Printの写真集からマガジン、Zineを集めました。1点ものも多くあります。どうぞこの機会をお見逃しなく。
『Babyland』 1995 Little More
ホンマタカシ第一作品集。3年後の『Tokyo Suburbia』を待つまでもなく、作者の処女作には予兆とすべてが投影されている。不透明な意味の付着を極端に避け、クールで、陰影のない、明るくクリアな、ヒエラルキーのない等価な写真。ニュー・ドキュメンタリーはすでキックオフされていた。岡崎京子氏との対談 冊子付き 編集・企画 後藤繁雄氏 デザイン 原耕一氏
『Hyper Ballad - Icelandic Suburban Landscape』 Swich Publishing
ホンマタカシ氏の写真のモチーフの一つ「郊外」が明確化された初期写真集の代表作。同質で均一的な風景は、明るくもあるが不穏で寂寥感ただよう。アイスランドのレイキャビク郊外を延べ20日かけ撮影。米国で郊外化の推移を撮影した写真で知られるロバート・アダムズ氏の写真集『What We Bought : The New World』や『To Make it Home』が発想のネタに。
『TOKYO SUBURBIA』 1998 光琳社
1999年の木村伊兵衛賞受賞作品、今や海外では日本の写真集の中でContemporary Classicの金字塔と目されている。オートマティックに管理、制御された東京郊外の風景。セットのような非現実感のなかにいる子供たち。記憶を消されたような写真は、表面を守るようにコーティングされ、郊外の高層住宅の様にシュミレートされ物化された。造本:大貫卓也氏
『TOKYO WILLIE』 2000 Taka Ishii Gallery
フェティシュモデルのベティ・ペイジや自身の妻をキャスティングした「ビザール」誌(1946~59)を発刊し、伝説的ボンデージアーティスト、ジョン・ウィリー氏(シンガポール生まれ米国で活躍)にオマージュを捧げたもの。タカ・イシイギャラリーで開催された展覧会図録小冊子。展示27点から10点のみの収録。1000部限定
『Tokyo and My Daughter』 プリント付き 1/50 Limited to 50 copies(Special Edition) 2006 Nieves
「写真は真実を伝えることはない」。ホンマタカシ氏の写真観がタイトルを含めそのまま1冊に化したまさに「罠(トラップ)」のある写真集。「My Daughter」として写真に写されているのは、ホンマ氏の娘ではなく友人の娘。友人の「家族アルバム」か「Found Photo」よろしく、写真を拝借し「再撮影」し、自らのTOKYO写真を交えて1冊に再構成している。虚実の際から感じられるものとは。
『Tokyo』 2008 Aperture N.Y.
本作品集は、たとえていえば20世紀初頭のAtgetの「Paris」、Berenis Abbott氏の30年代の「New York」、50年代のWilliam Klein氏の「New York」、60年代後半のEd Ruscha氏の「L.A.」、「TOKYO」のポストウォーを路上でドキュメントした森山大道氏の写真集、そうした「メガロポリス都市」の”ポートレイト”の系譜に位置しよう。
『Tokyo Suburbia』も含め、計6作の写真集からセレクションされ1冊に再構成。写真集出版の中心地の一つApertureによって高く評価され、ほぼ国内出版オンリーだったホンマタカシ氏の写真(集)が事実上初めてまとまってグローバルにディストリビュートされた記念すべき1冊。
『Mountains Seeing Itself』 2008 Limited Edition of 500 between the books
タイトル「Seeing Itself」は、スーザン・ソンターグ氏の「Photography is, first of all, a way of seeing. It is not <seeing itself>」(写真とは何よりも一つの見方であり、見ることそれ自体ではないのだ」に由来。あえて<見ることそれ自体>をタイトル化することによって、写真を考察させます。
『Trails』 2009 マッチアンドカンパニー
ホンマタカシ氏の写真テーゼ:「写真は『真を写す』ものではない」「現実の荷姿でしかない」を端的に表明した作品。北海道・知床での鹿狩りに随行、白い積雪のなか瀕死の獣の鮮血の痕のドキュメントは、赤いアクリル顔料のストロークによって、ここにも写真という「虚構」が準備された。
『M2』 2010 Limited Edition of 500 Gallery 360°
「マクドナルド」と「シルクスクリーン」。同じものだけれどもちょっとづつ違う。近似する姿を増殖しつづけたMは、いまや世界117カ国に32000もの店舗。地方や他国で遭遇するMは、ドット化し、4色刷り、3色刷り、刷りズレを起こしているようだ。本写真集の「表紙」はそのシルクスクリーンによる。
『Diaries 2010~2011』 2011 MdN Corporation
アレック・ソス氏とマーティン・パー氏との往復書簡から、「Between the Books」誌上編集会議、ワークショップ「たのしい写真」体験記などで構成されたダイアリーならぬヴィジュアルダイアリー集。インタビューも含め自作の説明を潔しとしない姿勢のこと、批判的だった無意識を利用したような日本的な写真に対し、それを特異性とみて強みとする考えなど興味深いインタビュー(タカザワケンジ氏による)も掲載。
『ニュー・ドキュメンタリー』 2011 朝日出版社
2011年の金沢21世紀美術館を皮切りに、東京オペラシティ、丸亀猪熊玄一郎現代美術館へループした巡回展図録。「Trails」にはじまる作品展示で、ホンマタカシ氏は意識的に「現代美術のルール」で作品を発表しつつ、「今、写真に起こっていること」をこめ、”絶命的”(関頭の椹木野衣氏の言葉)なほどに、写真の際(きわ)を提示した。
上記以外の写真集ご用意あります。ご来店お待ちしております。
お問合わせは、代官山蔦屋書店代表まで。03-3770-2525
アート・コンシェルジュ 加藤正樹
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