2019年2月27日

【第2回】代官山映画オヤジの部屋『平成を代表する映画~外国映画編~』

第2回目は【平成を代表する映画】外国映画編です。


皆様、ふと思い返してください。平成元年、30年前は映画をどうやって鑑賞していました?映画館での鑑賞はもちろんですが、では家庭でのTV放送以外では何で見ていました?そうですビデオテープでしたよね。またはDVDより遥かに大きなLPサイズのレーザー・ディスク(若い方は見たこともないでしょう)でしたよね。

平成という時代が変えた代表的なもののひとつが、この映像記録メディアのファーマットなのです。テープからディスクに、そしてサイズを小さく手軽なものにしたのです。1996年末(平成7年)のことでした。

しかし、その交換作業が販売店の店頭ですぐに進んだわけではありませんでした。映画オヤジ的には記憶が鮮明なのですが、1998年に発売された『タイタニック』はVHSのビデオソフトの頂点で、今では考えられない480万本(100万以上で大ヒットです)を出荷し、生産が間に合わないと社会問題化したほどでした。この時点ではまだテープの天下、DVDプレイヤー発売から2年経っても、まだまだ一般家庭には浸透はしてなかったのですね。

タイタニック
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そのDVDの市場拡大に大きな貢献を果たした映画こそ2000年春に発売された『マトリックス』の1作目でした。同時期に登場したゲーム機プレイステーション2にDVD再生機能が搭載されたお陰で、まさに若いゲーム世代から爆発的に広がっていったのでした。作品の内容も日本のアニメから影響を受けたスタイリッシュなアクションということで、DVDとゲームの親和性という部分が高かったと言えるでしょう。

マトリックス
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こうして2本の作品は大ヒットと共に、この平成30年間を代表する映画と言える存在になりました。そしてジェームズ・キャメロン監督は、その後『アバター』で自ら『タイタニック』で持っていた興行収入の世界記録を更新し、名実共にハリウッドで最も影響力を持つ監督になりました。

アバター』は興行成績だけではなく、3D上映というテクノロジーの面からも画期的作品として記憶されます。残念ながらホームシアターも含め3D画面は大きな市場拡大の役目は果たせませんでしたが、アトラクションとしては認知され、進化を遂げる可能性を残しているのが現状です。

アバター
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平成を振り返ればもう一人の人気監督が思い出されます。『レオン』のリュック・べッソンです。ジャン・レノという俳優共々、この作品のアイコンぶりは半端ありません。殺し屋レオンの【愛とバイオレンス】の生きのイイ映画で、その後のアクション映画に大きな影響を与えました。殺し屋がふとした優しさで誰かを助けて死んでゆくパターンの作品に出会うたび、"なんか『レオン』みたいだなぁ"と映画オヤジは思うのでした。

レオン
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残念ながらリュック・べッソンはその後『レオン』を越える作品は作れず、プロデューサー業のほうが忙しくなってしまいました。その反対に徐々に作品の完成度を高めた監督として挙げられるのがギレルモ・デル・トロです。オタク風味の映画ばかり作っていながら、ついに昨年オスカー獲得にたどり着いてしまいました!

2006年に『パンズ・ラビリンス』を発表して、その成熟度に驚きを覚えましたが、今回アカデミー賞作品賞、監督賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』は更に唸らされました!時代背景におけるアメリカの暗部、マイノリティの人間たちへの愛、古きよき時代の映画の趣味、どれをとってもみどころ十分な映画です。この12年間で彼の作風が時代にマッチしたと言えるのではないでしょうか。

パンズ・ラビリンス
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シェイプ・オブ・ウォーター
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そして平成時代はアメリカ映画、またはヨーロッパ映画だけに固執することを止めたのも特徴のひとつでしょう。本当に面白い映画はアジアにあり、と映画ファンは気づいてしまったのです。1998年あたりから紹介されてきたインド映画。しかし独特の踊りがストーリーを妨げるマサラ・ムービー(もう死語?)を苦手に思う人もいました。かく言う映画オヤジもそのうちの一人。そんな人さえも楽しませたのが『きっとうまくいく』で、これは本当に元気をもらえる映画でした。インド映画の陽性が世界に受け入れられたのです。

きっとうまくいく
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同じ年2009年には、なんと韓国映画が初のキネマ旬報誌で外国映画ベストワンに輝きました。タイトルは『息もできない』。
イケメン男優と派手なアクションや、おどろおどろしいミステリーだけが韓国映画ではなかったのです。破滅型青年と純真な娘の葛藤劇は見事に映画ファンの心を捉えたのでした。

息もできない
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ハリウッド映画を見る限り、この30年間での主流となった特撮映画の数々は、もう映画には描けない場面はないと思わせるほど、デジタルまみれとなってしまいました。
しかし唯一デジタルでは表現できないのは人間の心です。
それを画面に映し出すことができるのは俳優による微妙な表情や、監督による細やかな演出というアナログそのものなのです。

デジタルとアナログの融合というキーワードも含め、今回取り上げた外国映画で、この平成30年間を振り返ってみてはいかがでしょうか。


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代官山 蔦屋書店 映像担当コンシェルジュ
吉 川  明 利

【プロフィール】
小学校6年で『若大将』映画に出会い、邦画に目覚め、中学3年で『ゴッドファーザー』に衝撃を受け、それからというもの"永遠の映画オヤジ"になるべく、映画館で見ることを基本として本数を重ね、まもなく47年間で10000本の大台を目指せるところまで何とかたどり着く。2012年より代官山 蔦屋書店映像フロアに勤務。



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