第7回目となる大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2018が7月29日~9月17日まで開催中です。
http://www.echigo-tsumari.jp/
約20年目を迎える芸術祭ですが、今年は378点の作品、44の国と地域、335組のアーティストが参加しています。
回を重ねる毎に規模・知名度共に拡大していく話題の芸術祭を訪れて、気になった作品をご紹介します。
【アート・フラグメント・コレクション/川俣正+edition.nord】
松代エリアの旧清水小学校の2~3階にかけて展開されているインスタレーションは、作品制作の過程で発生した様々なもの=フラグメント(断片)を「アート・フラグメント」と位置づけ、作品の保管・保存について考察するアートの廃品回収プロジェクトです。
インスタレーションの中には、「最後の教室/クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン」の扇風機、
「棚田/イリヤ&エミリア・カバコフ」のマケットなど、おなじみのものから…
(付箋の文字を読むと誰の作品かわかります!)
このインスタレーションは表から見ると妻有の地形を模したような形をしていますが、裏に回りこむとそこには…
本棚の迷路が!これは美術評論家・中原佑介の遺した蔵書(約3万冊)の保管場所にもなっており、訪れた時にも並べる作業が継続されていました。
土地の持つ歴史と関連した記憶や妻有の豊かな自然環境をテーマにした作品が多い中で、
芸術祭自体をモチーフとしアーカイブ機能も併せ持っているという点で、そのユニークな視点が印象に残りました。
芸術祭を見て回る中には、次々と新しい場所ができていく状況の移り変わりや設置環境などから時間の経過を感じる作品もありましたが、このインスタレーションは芸術祭の変化に合わせて継続していく点でも、次回見るのが楽しみな作品です。
【大地のおくりもの/鞍掛純一+日本大学藝術学部彫刻コース有志】
奴奈川キャンパスの正面玄関からエントランスホールにかけて壁一面に展開されている木彫作品。こちらの作品は説明云々よりも、手仕事の集積による密度と爽快な印象を感じました。
【Palimpsest: 空の池/レアンドロ・エルリッヒ】
【Palimpsest: 空の池/レアンドロ・エルリッヒ】
今回の芸術祭の新作として、とても話題になっていたこちらの作品。写真を撮るのが非常に難しいです…エルリッヒは2017年に行われた森美術館での展示「見ることのリアル」でも一般的な知名度・人気を高めましたが、今回の作品も大人から子供まで無邪気に体験している姿が印象的でした。アートの知識がある・ないに関わらず多くの人が思わず巻き込まれてしまう魅力を作り出す手法がここでも生かされていました。
他にもとても一度に見ることのできないくらいのたくさんの作品が展示されている芸術祭ですが、当店では毎年パスポートの販売を行っています。さらに今年は「“アートワールド”は大地の芸術祭をどう見るか」 と銘打ち、大地の芸術祭総合ディレクターである北川 フラム氏と、今年発売された著書『現代アートとは何か』で国際的な見地から世界のアートワールドの現状と日本の現代アート業界に物申した小崎 哲哉氏を招いてのトークイベントを行いました。
お二人それぞれの立場から大地の芸術祭についてとても熱いトークが繰り広げられたのですが…
北川氏はグローバル経済の中で一見厳しい状況に置かれている地域をあえて開催場所に選び、その状況を芸術祭を通して変えていくことで社会にインパクトを与えようとしています。越後妻有は現在は米どころとして有名ですが、中央から外れ流入してきた人々が棚田などの様々な工夫を行ったことが背景にあり、豪雪地帯であることから外との繋がりも少ない厳しい環境だったそうです。
そこで行動を起こしていくことの重要性を、特に「2018年の〈方丈記私記〉~建築家とアーティストによる四畳半の宇宙」というプロジェクトを取り上げながらお話していたのが印象的でした。
対して小崎氏は、情報の少ない(世界のアートワールドの現状が伝わっていない)閉ざされた世界の中で成立している日本のアート業界の現状を危惧されており、大地の芸術祭についても世界との繋がりをどう作っているのか、という点において鋭く切り込んでいらっしゃいました。
豊かな自然に囲まれた中での作品鑑賞を楽しむ一方、イベントのお二人のお話も頭に浮かぶ…そんな芸術祭体験でした。
芸術祭の会期は17日までとあとわずかですが、連休を利用してぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
また小崎氏の著書が気になった方もぜひ読んでみることをお勧めします!
アートコンシェルジュ 森田ゆう奈
0 件のコメント:
コメントを投稿