2016年2月10日
ザッツ!アメリカン・クラシックス!
最初に『ザッツ・エンタテインメント』に出会った。
高校生の時に見たMGM映画創立50周年記念のアンソロジーミュージカル映画です。
それまで、『オズの魔法使』や『巴里のアメリカ人』などはNHKの放送で見てはいたものの、
『ザッツ・エンタテインメント』を見て、その会社が作り出すミュージカルの数々に驚愕しました。
こんな映画がハリウッドで作られていたことに驚かされたとともに、それまで知らなかったハリウッド映画の歴史及び、ミュージカル映画に対する興味が猛烈に湧いてきた。
まさにそこが、自分のアメリカン・クラシックス映画への愛の入口でした。
ミュージカル映画好きであれば、知っていることですが、アメリカのミュージカル映画の分岐点は『ウエスト・サイド物語』と言われており、『ウエスト・サイド物語』以降はミュージカル映画に何らかのメッセージを求められるようになりましたが、それ以前の作品は単純に「ボーイ・ミーツ・ガール&ハッピーエンド」の作品が大半でした。
そこに、フレッド・アステアやジーン・ケリー、そしてジュリー・ガーランドなどの
踊りや歌の芸を堪能するというのが、ミュージカル映画の楽しみ方でした。
『ザッツ・エンタテインメント』にはそうした幸福な時代につくられた数々の名場面が散りばめられています。
そのミュージカル映画の数々をリアルタイムで接することのできなかった世代は
やがてやってきたビデオパッケージで映画に収録されている個々の作品の全ての本編を見ることを目標としていました。
その目標を達成するには長い年月、アメリカなどでしか発売されていないビデオカセットを買い漁るしかありません。
私もその一人でした。
ミュージカルに限らず、100年に及ぶハリウッド映画の歴史は数々の名作を生み出しています。
ハリウッドの第一時期黄金時代は1930年代。
『風と共に去りぬ』『駅馬車』『スミス都へ行く』『嵐が丘』などの名作が生み出された年。
幸いにして、現在はこれらの名作をDVDで見ることができる時代になりました。
その後、映画は1927年に「音」を得ました。トーキー映画の誕生です。*1
トーキー第一作目の『ジャズシンガー』が生まれたことで、映画は「声」を得たのでした。
ミュージカルの歴史もそこからスタートしたと言えます。
やがて、「カラー」が生まれ、テレビの登場に負けないように大型スクリーンと音響システムや特殊撮影などの技術革新を遂げましたが、
本質的な物語やエモーショナルな物語を語る技法そのものは1930年代後半で
実は完成されていたのです。
現代の映画を見て、そこから明らかに退化している作品も見られます。
今一度ハリウッドクラシックスに親しんで映画とは、「かくも素晴らしいもの」と認識していただければ幸いです。
というわけで、アメリカ映画のクラシックスに分類される名作と
ハリウッドで生まれたミュージカル、およびブロードウェイ上演作品の映画化などのアメリカンミュージカルコーナーを設けました。
ぜひアメリカン・クラシックスにふれ、その映画の伝統を感じ取っていただければと思います。
映像コンシェルジュ 吉川 明利
*1 トーキー(talkie)映画とは映像と音声が同期した映画のこと。talkie という語は talking picture から出たもので、無声映画 (moving picture) を movie と呼んだのにならったもの。