2014年6月21日

アンドレアス・グルスキー「MONTPARNASSE/モンパルナス」入荷: Anjinショウケース

 アンドレアス・グルスキーの写真ファンの方で、作品「MONTPARNASSE/モンパルナス」の写真イメージをご記憶されている方も多いかとおもいます。
 昨年夏新国立美術館でのグルスキー自身のキュレーションによる大展覧会でも、この作品は展示されていましたね。

 この度、カフェラウンジAnjinでは、この作品「MONTPARNASSE」をモチーフに、1冊のコンセプトブックに仕立て上げた「one-picture book」を展示・販売致します。





 作品「MONTPARNASSE」は、A.グルスキーの地元ドイツのギャラリーPortikus Frankfurt am Mainでの展覧会に際して制作されたBox入り作品で、複製印刷された作品「MONTPARNASSE」が1点入っています。



 Boxから、内容となるイメージブック・テキストに至まで、すべてがトータルに、グレイを色調にしたシックな仕上がりとなっています。(Box左側に見える拳銃の表紙の作品は、グルスキーの写真集で、別売のものです)






 この横長の大判サイズの「one-picture book」は、世界のブックコレクターからも注目を浴びた作品として知られ、『The Photobook:A History Vol.Ⅱ』(マーティン・パー)においても、グルスキーの作品集に限らず、1990年代の代表的作品集として選定されています。
                 



左側の書生は、グルスキーの別の写真集(同時展示中)




 A.グルスキーの他の作品で、「one-picture book」になっているものはなく、「MONTPARNASSE/モンパルナス」がそれだけ特異な位置を占めている作品となっていることがわかります。





 
 その理由の一つは、「MONTPARNASSE/モンパルナス」が、A.グルスキーの写真キャリアの中で大きなターニングポイントとなったことです。

 今日、グルスキーファンならばよく知っていることですが、「Montparnasse」は、2分割でフラットに撮影した写真を、精巧なデジタル加工を施してつくりあげた最初期の作品(1993年制作)でした。
よって本作品集は、「Montparnasse」が撮影された2年後に制作されたものとなります。



A.グルスキー 「Rheim Ⅱ」
     
 「MONTPARNASSE/モンパルナス」は、アート写真のオークション市場で、 4億3000万円という史上最高落札額(2012年)をつけるたA.グルスキーの「Rheim Ⅱ」や、「99cent」(共に1999年制作)へとつながるキーとなる作品となります。





 1990年代初頭、デジタル加工された写真プリントへの評価は、アート写真の中で占める位置は決して高いものではありませんでした。これ以前は、アート写真史上最も高額で取り引きされたのは、ダイアン・アーバスやエドワード・スタイケン、シンディー・シャーマンたちでした。





大きな影響を受けたジェフ・ウォールの写真の前に立つA.グルスキー


 もっともA.グルスキーの精密なデジタル合成写真がアートマーケット市場において、突如として評価の対象になったわけでなく、それ以前よりA.グルスキーに大きく影響を与えることになるカナダの写真家ジェフ・ウォールのパノラミックな巨大作品(デジタル技術による合成写真でした)が、高い評価を獲得していました。
「MONTPARNASSE」の1、2年前のことでした。もっともジェフ・ウォールの巨大写真は、コマーシャル写真にヒントをえた、裏から光をあてるライトボックス写真でしたが。

 ジェフ・ウォールにせよ、A.グルスキーにせよ、精密なデジタル合成写真によって作品がチープになることなどなく、逆にその写真世界には、確かなク オリティと衝撃、独自の世界観が打ちたてられていました。


            
「MONTPARNASSE」のパノラマ的作品に視線を凝らしてみましょう。 


 グリット構造の無数の窓枠の中には、リアルな日常の断片が見てとれます。


                      

独りたたずむ女性、窓から外をのぞいている男…。 

 各部屋で無関係に同時におこっていることが、1枚の写真の中に同時に映し込まれている。
アンディ・ウォーホルによって制作された、2つのスクリーンで同時進行する映画「チェルシーガールズ」の拡張版といえるかもしれません。これほどの部屋数ともなれば、人の眼の能力や注意がもはやとらえることのできない光景でしょう。カメラというメカでしか捕捉することができない、人間の視
覚を超越した、それでいて生々しさも残滓するドキュメントな光景なのです。


 代官山T-siteへ、ラウンジAnjinへお越しの際には、ぜひA.グルスキーの「MONTPARNASSE」をどうぞご覧下さいませ。直接ご覧になりたい方は、Anjinのスタッフにお超えがけ下さい。お待ちしております。

 文:アートコンシェルジュ 加藤正樹

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